市民運動の難しさ-元慰安婦の告発が広げた波紋-

韓国の元慰安婦である李容洙(イ・ヨンス)さんの記者会見から始まった騒動は、支援団体(正義連)や尹美香(ユン・ミヒャン)議員の不正疑惑までに広まっている。

李さんの主張については、下記にいくつかの関連記事をシェアする。


これに対して、尹議員は記者会見を行い、不明朗な会計や不透明な事業について一部弁明を行ったが、多くの部分はまだ明らかになっていないままだ。

今回の騒動は、「市民運動」というものの難しさを改めて示したように思う。正義連(旧挺対協)も戦争の被害者であるハルモニたちの力になりたいという「善意」によって、作られたことは間違いないのだろう。正義連のビジョンには、「被害者の名誉と人権の回復」が真っ先に謳われている。

しかし、運動を広げるには力が必要である。運動における力とは、簡単に言えば、①共感を呼ぶ物語(メッセージ)②マンパワー③資金の掛け合わせである。この3つがフルに動員されて運動は広がる。運動を広げることは目的実現のための手段である。しかし、往々にして、運動を広げることが正義になり、本来の目的が忘れ去られる。目的と手段の倒錯である。

今回もその例外ではないだろう。拡大志向の中で、被害者に寄り添うという本来のミッションを忘れていなかったか。政府間の対話を通じて導き出されたギリギリの解を、多くのハルモニたちが受け入れることを運動体が阻んだのだとしたら、それを正当化する論理は何だったのか。

そういったものを再度考える機会に、この一連の騒動を転換していく必要があるのではないだろうか。ある教授は「運動家を守るために被害者を攻撃するような状況」と言っていたが、これこそ最低限避けるべきことであるように思う。

(写真:正義連の運営する戦争と女性の人権博物館にて)

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