新型コロナから考える政府、国民、データ

いよいよ日本でもコロナ特措法に基づく、緊急事態宣言が発出された。日本を離れている私にとっては、家族や友人が心配な日々が続いている。

先日、地元紙の福島民報に韓国のコロナ対策の現状をレポートした。


この記事には、思いのほか反響があった。その中でいくつかあった反応でもあり、最近ネットでも散見されるのは「韓国の対応はすごい」というものだ。これには、個人的にはそう思う部分もそう思わない部分もあるのだが、今回のコロナウイルス対策に関しての「韓国すごい」論(韓国への賞賛)には大別して3つあるように思う。

①徹底的な情報公開
②検査数の多さ、それを支える検査キット量産体制
③ロックダウンなしでここまで対応したこと

③は①と②に支えられて実施できていることを考えれば、施策としての肝は①と②であろう。②は、MERSの経験を踏まえ早期に検査キットを量産し、またドライブスルー含め大量検査を可能にした点は、確かに先手の対応ができたと言えるだろう。

しかし①はどうだろう。韓国では、住民登録番号にリンクされたクレジットカードの使用履歴、病院の訪問履歴などから割り出した感染者の情報を国民に公開してきた。

政府の視点から見たときに、政府が種々のデータを活用する方法には2つある。

①政府がデータを集め、直接活用する
②政府がデータを集め、それを一般に公開し活用してもらう

韓国政府は上記2点とも積極的に行ってきたが、それが日本でどこまでできるだろうか。

①では、韓国では住民番号がクレジットカードにも保険にもつながっている。だから政府が感染者の動きを追跡し確認できる。個人情報が政府によって一元管理されているからこそである。これをディストピアと見るのか、必要なことと見るのか。国が個人のデータを集め活用することを是認するのかが核心であり議論すべきポイントである。そしてこのようなシステムは平時から整備しておかなければ、今回のような有事でも機能しないのは明らかである。日本では、マイナンバーをどう活用するかがポイントであろう。

②に関しては、韓国ではマスクのデータなどを政府がスタートアップに供給し、そのデータに基づいてスタートアップがマスクの在庫状況をマッピングしている。他にも広範な情報を民間企業に提供し、分析・活用を進めてきた。(下記の記事参照)

プライバシーの保護、情報セキュリティの強化に留意しつつも、政府がデータ提供のハブとなって民間のソリューションを引き出すことが韓国では志向されている。目に見えないウイルスとの戦いにデータで勝つためには、まずは国がハブとなって現状で活用可能なデータを整理し公開していくことが第一手である。ここには、国民的な反発も少ないであろう。

問題は、平時から政府が国民のデータをどこまで把握し、国民生活の利便性向上と有事対応に活かせるのか、どこまでを国民として許容するのかという点である。新型ウイルスをきっかけに、より深く考えていくべきテーマであると思う。

桜と新緑が一度に楽しめる季節が来た(ソウル・汝矣島)

永井宏志郎事務所(Koshiro Nagai Office)

永井宏志郎事務所の公式ブログです。

0コメント

  • 1000 / 1000