日韓関係雑感ー行き過ぎたナショナリズムとそれを引き起こすものー
日本が韓国をホワイト国から除外したことは、こちら韓国でも大きなニュースになっています。ただ、これに対して韓国はGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の延長拒否などのカードもちらつかせ、どちらも全く譲らない状態です。
こういった状態をソウルで目の当たりにしながら私が思うことは以下の2つです。
①両国ともに行き過ぎたナショナリズムを自制してほしい
②しかし、現状で①を期待できない構造がある以上、諦観するしかない
まず、今回の事態のエスカレーションの原因には、国民の受ける情報の非対称性などから来るナショナリズムに乗じた、両国の軽薄な政治体制があると考えます。
日本側を見れば、安倍政権が参院選のタイミングでこのホワイトリスト除外を提起したこと。またその対応を「安全保障上の理由」としておきながら、実質的には徴用工など一連の歴史問題に対する報復であることを隠しきれなかったことなどを見れば、今回の措置の安全保障上の意義は一定程度理解しつつも、額面通り受け入れられない部分があります。そして政権に、それが選挙での勝利、政権浮揚の一助になると踏まれ、一面的なメディア報道に踊らされている我々日本国民の弱さも見て取れます。
しかしながらそれ以上に、慰安婦財団の解散、徴用工問題のハンドリングなど日韓関係に尽くしてこられたリーダー達の功績をひっくり返してきた今の文政権の政権運営は本当に残念です。日韓関係において評価できる点は1つもないといってもいいのではないでしょうか。今日の「日本に勝つ」と息巻いて見せた文大統領のスピーチからは、日本を利用して国民を鼓舞するリーダーとしてのPR戦略は見えても、それ以上の何かは見えませんでした。
どちらの国の総理・大統領とも両国の国民が選んだリーダーです。それが、このような報復合戦に終始していることは、一国民として大変に恥ずべきことだと感じます。ではこれを打開する道はあるのでしょうか。私は残念ながら簡単にはないと思います。
今や一人当たりGDP(購買力平価)をみれば、韓国は日本と同水準ですし、韓国の輸出に占める日本の割合は私が生まれた1990年ごろに20%弱あったところから、今は5%を切る水準まで落ち込んでいます。それに対して、中国は韓国の輸出の約4分の1を占めています。30年前ならまだしも、小さくなってしまった日本に何を妥協する必要があるんだというのが今の韓国政府の認識なのかもしれません。
今日の文大統領のスピーチにこんな一説がありました。「韓国と日本、両国間には不幸な過去事(過去の出来事)による深いキズがあります。しかし両国は長いあいだその傷を縫い合わせ、薬を塗って包帯を巻いて、傷を癒そうと努力してきました。しかし今になって加害者である日本が逆に傷をえぐるならば、国際社会の良識が決して容認しないという点を日本は直視するべきです。」これは穿った見方をすれば「だからこそ、歴史の傷をこちらも利用させてもらう」という宣言のようにも聞こえました。
日韓両政府ともに、強く出ることが存在意義となっているように見えます。そして、それを許容してしまう国民感情と経済含めた構造的な変化がある中では、正直すぐに何か大きな変化・前進は望めないでしょう。韓国に暮らす日本人として、圧倒的な無力感と諦めにも似た感情に、今の私は包まれています。
しかし、韓国が日本の永遠の隣人であることに変わりはありません。そして、朝鮮半島の持つポテンシャルが、中長期的な日本経済にとってプラスになることも確かです。こんなタイミングだからこそ、韓国に暮らす一市民として、小さな相互理解の芽をつぶさないようにできることはしていこうと思います。
こんなタイミングでしたが、今日は国会を訪問して与党議員の方ともお話する機会をいただきました。何度も言いますが、半ば諦めの中でも、できることはしていこうと思います。
0コメント