安倍総理辞任で日韓関係は変わる?-他国の政治を理解するということ-

安倍総理の突然の辞任表明には正直驚いた。7年半続いた長期政権といえども、幕引きはあっけないものである。

安倍総理辞任の報は、もちろん韓国でもすぐに報じられた。私の所にも、普段は政治の話などあまりしない友人たちから「安倍、辞めるんだってね?」と連絡が来た。そして話は、「安倍が辞めたら、日本の政治は変わるの?」と大体続く。

私が、「まぁ安倍総理に近い人が次もなるだろうし、基本変わらないと思う」と答えると、ぽかんとした表情。頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるかのような顔をされる。韓国人の多くにとっては、「最悪の総理なのになぜ?」という認識なのだろう。

しかし、日本人の多くもその認識なら、そもそも7年半も政権は続くはずがない。実際に、朝日新聞の世論調査でも、安倍政権を「大いに」または「ある程度」評価する人が71%である。

韓国のメディアに毎日触れている韓国人からすると、これが理解できないのかもしれない。

昨年、「Noアベ!」が叫ばれている中、光化門で行われた大規模集会では、日本の労働組合の代表者が安倍政権批判を叫んで喝采を浴び、テレビでも報じられていた。あの場面だけを見ると「安倍政権はやはり最悪の政権で、日本人の多くが安倍政権打倒のために声をあげている」と錯覚する人がいるのも理解できる。しかし、実際の日本国内の世論とは、大きな乖離があったことは言うまでもない。

さて、安倍総理の辞任は日韓関係にどのような影響をもたらすだろうか。安倍政権退陣を受けた韓国の新聞の社説を読んでみた。例えば、中道保守の中央日報、進歩系のハンギョレ新聞ともに「安倍首相の辞任、韓日関係改善の変曲点にすべき(中央日報)」、「安倍首相の突然の辞任、韓日関係改善の出発点に(ハンギョレ)」と安倍退陣が日韓関係改善の好機になればと期待を寄せている。そして、2社ともに歴史問題と安保・経済を切り離すツートラック外交を提唱している。


しかし、現状が、総理交代を梃子にして日韓関係における大きな変化を許容するのかは疑問である。日々の生活が日韓関係に振り回されてしまう一市民としては、冷静に事の推移を見守るしかない。

さて、ここまでは自分の思い込みや希望的観測で日本の政治を見てしまう韓国人の話をしたが、翻って日本人として考えなければならない点もあると思う。それは、「自分の色眼鏡や勝手な尺度で他国の政治を見てはいないか」ということである。

こと韓国については、「政権末期の反日文政権!」みたいな見出しが、就任間もないころから週刊誌などの見出しに踊ってきた。今やビジネス誌でさえもそんなノリである。

しかし、安倍政権がそうであったように、文政権もこの所若干落ちてきているものの、過去の政権に比べると比較的に高支持率を維持してきた。これが事実である。煽情的なメディアに騙されず、冷静にその数字の裏側にある理由を考えてみることが重要だろう。

「自分の色眼鏡や勝手な尺度で他国の政治を見てはいないか」と省みること。これは、何も日韓の話にとどまらず、他国の政治を理解するために、誰もが気をつけるべき点ではないかと思う。

(晩夏のソウル  セッカン歩道橋からの眺め)

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